仕事で多忙を極める中、ようやく夏休みがやってきた。
私はゴールデンウィークやお盆休み、お正月休みには基本的に旅行には行かない。
混雑するからだ。
しかし、会社の夏休みはある程度自由に取得が可能なので、時期をずらせば混雑を避けて各所を回ることが出来る。
一年に一度の旅行、さて今年はどこへ行こうか。
この夏休み期間中に天気が良くて、珍しいものや面白いものが見られて、美味しいものが食べられるところがいい。
実は以前から行きたかったところがあった。
伊勢神宮である。
普段トラブル対応を任されている部署なので、私はかなり験を担ぐ性格だ。
最近大きなトラブルに見舞われることが多かったことから、神頼みでもなんでもしてみたい気持ちだった。
しかも、松坂牛も食べられるとあって、天気が良ければ是非今年は足を運んでみたいなと思っていた。
天気予報によれば、週前半は雨で後半から晴れる模様だったので、今年の目的地は伊勢神宮に決めた。
初日は天気予報の通り、大雨だった。
流石にこの天気では伊勢神宮へのお参りは大変だと思ったので、現地初日は鳥羽水族館を見学することにした。
鳥羽水族館は子供の頃に家族旅行で1度来たことがあった気がするが、他の水族館も含めれば水族館自体行くのは20年以上振りだ。
鳥羽水族館は飼育種類数が日本一とのことで、古代の海洋生物から極地や深海生物まで、レパートリーが幅広い。
この歳で改めて訪問してみると、水族館はお魚や海獣を見るだけの場所ではなく、一種の研究施設も兼ねていることが分かる。
プレートテクトニクスからの生物進化の研究、温暖化への取り組み、海洋生物の繁殖や飼育、セイウチやアシカ達の調教含めた生態調査など、学術的に取り組んでいることが意外と多いことに気づかされる。
セイウチふれあいタイムの様子
セイウチやアシカのショーでは、よく調教されていると思った。
ポーズを決めたり、拍手したり、セイウチはハーモニカまで吹けるらしい。
本当にお利口さん。
他にもペンギンのお散歩や海獣のお食事タイムなど見所が沢山あり、鳥羽水族館には6時間ぐらい滞在していたと思う。
2日目はキレイに晴れて、外出日和。
今回の旅行の本命である、伊勢神宮にお参りした。
前日に調べて分かったが、伊勢神宮には内宮と外宮があり、まずは外宮からお参りし、それから内宮にお参りするのが慣わしとのこと。
外宮と内宮は結構離れており、私は自家用車で問題なかったが、外宮から内宮へのタクシーも出ていた。タクシー料金は2500円程度らしい。
外宮で御朱印帳を購入し、記念に外宮と内宮それぞれで御朱印をいただいた。
このご利益により、少しでも仕事でトラブルが減ればと思う。
お参りは2拝2拍手1拝。
鳥居の前でお辞儀など、地元で初詣する際は作法についてあまり意識してこなかったが、これでまた一つ勉強になった。今後はこの作法をちゃんと実践していこう。
内宮の正宮 皇大神宮
屋根の苔の生え具合からも、歴史と趣深さが感じられる。
ひと通り回ったところで、内宮前のおかげ横丁も散策。
美味しそうな地元グルメも多く、お昼ご飯も兼ねて色々食べ比べてみた。
憶えているだけで、松阪牛串に鮎の塩焼き、タコ棒にトン串、アワビバターにおやき、デザートにクリームソーダーを食した。
どれも美味しく、他ではなかなか食べられない逸品も多かった。
3日目の午前中は夫婦岩、午後からは伊勢シーパラダイスに向かった。
夫婦岩へは、伊勢シーパラダイスからも歩いて直接行くことが可能だ。
縁結びや夫婦の絆、家族の絆、世界平和や共存共栄の絆に御利益が頂けるそうだ。
夫婦岩(しめ縄は重さ40kgもある)
伊勢湾を眺める場所としても最高。
1日目訪れた鳥羽水族館とは距離も近く、伊勢シーパラダイスも水族館ではあるが、伊勢シーパラダイスの魅力は動物との距離感が非常に近いことである。その点で鳥羽水族館とは差別化を図っているのかもしれない。
セイウチやアシカのショーは伊勢シーパラダイスでも行われていたが、とにかく動物との距離が近い。
近すぎると言っても過言ではない。
動物と人との間に柵は無いし、体重が500kgを超えるセイウチとはゼロ距離で触れ合うことが出来た。
セイウチの体やおひげにまで触ることができたのはとても貴重な体験。
アシカショー (距離がとても近い)
セイウチお散歩タイム (近すぎる)
他にも、トドのえさやりも間近で見ることが出来たし、ツメナシカワウソとは握手も可能だ。
爪の無いカワウソもいるんだ。調べると南アフリカに生息しているらしい。
ツメナシカワウソの手は思っていたよりもぷにぷにしていて可愛かった。
それにしても、こんなに近くまで動物たちに触れ合えるのは、余程調教に自信がないとできないことだろうと思った。
相手は動物。海獣は体重が500kgを超える。もし暴れれば、大人でもひとたまりもないだろう。
飼育員さんの日頃の努力と動物達への愛と信頼が無いとできない。
ゴマフアザラシの子供 (ここまで間近でみられる)
トドの舌出し
モルモット達の整列 (触られ待ち)
モルモットにも触れ合える。モルモット達が触られるために扉の前に整列している。
扉を開けても逃げずにその場で大人しくしている。すごい。どうやって調教している?
ひと通り動物達のイベントを満喫し、伊勢シーパラダイスには5時間ほど滞在した。
4日目は伊賀流忍者博物館を見学。
伊勢からは車で1時間30分ぐらい。
結構な山道を進み、忍びの里はやはり山奥。
忍者屋敷は敵から身を守るため、色々な工夫や仕掛けが施されている。
どんでん返しが有名であるが、ろうか下の物かくしや刀かくし、地下道の抜け道、見張り場など、あらゆるトラブルを想定しているなと感じる。
屋敷のからくり一覧
忍者は任務を遂行するため、5つの道を究めたらしい。
一. 健康で強い身体作り(体)
二. 気落ちしない強い気持ち(気)
三. 臭いで気づかれないように清潔にする(香)
四. けがや病気に備えて薬草の知識を身に付ける、火薬の調合法にも長ける(薬)
五. 身軽でいるために野菜や豆腐、雑穀を中心に食べる、臭いのするものは食べない(食)
なるほど、現代の社会人にも通じるものがある。
体力を付けて、ストレスに負けない心を育み、美意識も持ち、役立つ知識とスキルを身に付け、健康的な食事を心がける。
忍者の修行
米俵一俵(60kg)を親指と人差し指で持ち上げる忍者修行。
自分の体重を指の力だけで支えるための訓練。
日頃より忍者は農業を営みつつ、修行に励んでいたようだ。
忍者の有名武器 手裏剣
手裏剣は結構重いらしく、当時は2~3枚程度しか持てなかった。
夜間に至近距離から相手の頭部を狙い、刃にトリカブトの毒が塗ってあったので、当たれば一撃必殺の暗殺用武器だった。
忍者屋敷の近くには伊賀上野城があり、折角なので中を拝観。
中は藤堂高虎公の調度品が沢山展示されていた。
藤堂高虎は徳川家康からも信頼され、また築城の名手だったそう。
伊賀忍者を配下に従え、色々な諜報活動を依頼していた。
藤堂高虎の遺訓二百ヵ条がある。
現代にも通じる内容も多く、感銘を受けさせられる。
以下にいくつか内容を紹介。
●寝室から出た時、今日は死ぬ日であると心に決めよ。そのような覚悟があれば、物事に動じることは無い。
●家来にはまず情をかけ、小さい失敗事は見逃すことが肝要である。もし大それたことが発生したら、それは自分の不運である。
●情を持って召し使えば徳が多い。言葉一つで命を捧げるのは情によるものである。禄を多く与えても命を捨てるほどにはならない。
●家来といっても異なる意見があればくわしく聞くべし。世間の評判を聞くことと同じである。
●人の中傷を聞いてはならない。人を監視するのは禍の元。何事も無かったようにふるまうべきである。
●食事の時、腹を立ててはならない。百姓が昼夜作ってくれる米だから、わが命を続けさせてくれる米に向かって怒る心を天が見逃すはずがない。深く慎むべし。
5日目は彦根城を見学。今日が旅行の最終日。
彦根城は井伊家の居城であり、流石は徳川幕府の政治にも関わった譜代大名。
お城もすごいが屋敷や庭園もすごい。
天守前広場までの道のりは大変で、急な階段を上り、櫓(やぐら)をかいくぐらないとたどり着けない構造になっている。
天守にも多くの矢狭間や鉄砲狭間、隠し部屋が存在しており、ここを攻めるのは大変そうだ。
天守からの眺めは最高
玄宮園 (お茶会や大名の社交の場)
藩主のお屋敷
お城以外にも玄宮園や立派なお屋敷があり、藩主の良い暮らし振りが伺える。
それでもやはり藩主の仕事は忙しかった模様で、玄宮園やお屋敷でも政治に関する会議を行ったりしていた。
彦根城博物館では井伊家伝来の貴重な資料を拝見することができる。
琵琶湖大洪水で水損した古文書
当時の政治的な何かを記録した文書だと思う。
PCの無い江戸時代でさえも、結構色々と細かく分析して記録していたのだと感じる。
現代では仕事においても面倒くさがって記録を取らないケースも多いが、昔の人たちを見習いたい。
今年の夏休みは、観光名所を回ることで色々と勉強になった。
得られた知見を是非、今後に役立てたい。
なお、今回の旅行で使用した金額は、全部で9万円弱だった。
途中、松坂牛のすき焼きをおかわりして食べて、2万円ほど使った。
5泊6日の旅で、9万円以内でこれだけ楽しめたので、十分満足のいく内容だった。
来年も是非また何処かへ行きたい。