トミーメーセーのRich&Famous

投資でセミリタイアを目指しつつ、日々の気になることを綴っていきます

昔、ブラック企業の内情や社会の闇を垣間見た瞬間

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先日、久しぶりに実家に帰省した際、母親から聞いた話では、近所のSさん家のお姉さんが精神を患い、生活保護を受けて生活しているとのことであった。

 

幼い頃より、Sさん家の事は知っている。ご両親とお姉さんと弟君の4人家族。お姉さんと私の兄、弟君と私は年齢が近いということもあり、町内のイベントでも良く一緒に過ごした。

小学生の頃は、弟君と町内のみこし祭りで良く一緒に神輿を担いだし、少年卓球クラブにも一緒に参加していた。

 

しかし、私が大学に進学するかという時期に、ご両親が亡くなり、なかなか生活が厳しかったようだ。

お姉さんは介護の仕事に携わっていたそうだが、過労とストレスで精神を病んでしまった。弟君の方は現在別居中で、どこかでアルバイト生活を送っているらしい。

 

昔、幼少の頃を一緒に過ごしていた時期は、まさかこのようなことになるとは思ってもいなかった。明るい未来を疑うことがなかった。

 

もう一人、T君のことも紹介する。

T君は私と同じ年で、小学校と中学校が一緒であった。小学校の時は良く一緒に遊んだものだ。T君はとても優秀な子であり、スポーツ万能で学業優秀、みんなからも先生からも保護者からも一目置かれていたし、私の母親もT君のことを良くできた子だと思っていたようだ。

T君がやっているから同じ塾に通ったし、T君がやっているから同じ学童野球もやった。

それぐらい、私らにとってT君の存在感は大きなものであった。

 

T君は小学校および中学校では生徒会長も務め、その後、高校は県内有数の進学校へと進んだ。

私はT君ほど優秀ではなかったため、同じ高校へは進学できなかったが、T君は将来さぞ大物になるのだろうなと、その将来性を疑うことはなかった。

 

T君とは高校で離れ離れになり、それから数年後に再会を果たすことになる。

その時は突然やってきた。あの時は今でも印象に残っている。

 

会社に就職し、研修のため都内に一時住んでいた時があった。その時、突然T君から電話が掛かってきたのだ。最初は私の実家にT君から連絡があり、どうしても私の連絡先を教えてほしいとのことで、母親が私の携帯番号を教えたらしい。

 

たまたま都内で住んでいる場所も近かったので、会ってみることにした。数年ぶりに再会したT君はどこか疲れている印象があったが、これまでの思い出話に華を咲かせた時には満面の笑みだった。

 

そして、話は大学や就職の事へと進む。

T君は、大学は都内の文系の学部へと進み、現在は某企業の営業職に就いているという。大学の頃はいろんなアルバイトもしたし、彼女もいたし、それなりに充実した大学生活を送っていたのだそうだ。

T君が今住んでいるアパートに招待してくれた。部屋はお世辞にも広いとは言えないものの、几帳面なT君らしく、かなり綺麗に整頓されていたが、部屋に入るなり、まず目についたのは、テレビの横に置かれた棚の上に、革靴が沢山並べられていたことであった。

 

私「やけに革靴がたくさん置いてあるね。革靴を集めているの?」

最初は革靴が好きで、T君が趣味で集めているのかと思ったのだ。

 

しかし、返ってきた言葉は予想外のものだった。

T君「実は、そこに置いてある革靴は全て履けなくなったものなんだ。」

 

ぎょっとした。

よく見ると、どの革靴の底も、かなり擦り減っていることが分かった。でも、革靴の数が異常だ。1足や2足どころではない。10足近くはあっただろうか。

実は、私は大学院を卒業しているため、社会人としてはT君が2年先輩だ。ということは、2年でこれだけの革靴を擦り減らし、履けなくなるぐらいまで営業を頑張っていたということになる。

聞くところによれば、T君の勤め先はブラック企業として世間では知られており、それはやはり実際でもブラックだったようだ。

 

その後、別の日に私が会社の寮でテレビを見ているとき、突然T君から電話が掛かってきた。時間は既にPM9時を回っている。

 

私「T君、こんな時間にどうしたんだい?」

T君「こんな時間に電話してごめんね。実はまだ会社にいるんだけど、この後に上司と会議があって、それまでの間に君と会話したいなと思ってね。」

私「嘘だろ、今から会議なの?」

T君「そうなんだ。でもこれはうちの会社では普通だよ。」

 

T君に「頑張れ」とは言えなかった。

「健康には気を付けてね」と、精一杯、T君の身体を気遣ってあげた。

 

この電話を最期に、T君とは連絡を取っていない。

その後しばらくして、会社の研修が終了したと同時に、私は都内から地方へと移った。

 

T君は今も同じ会社に勤めているのだろうか。

私には到底そうは思えない。

あの時のT君の電話は、どこか悲しげでもあったが、何か決意めいたものもあったように思う。もしかすると、あの後、上司との会議の際に、辞表を提出したのではないだろうか。その一大決心の前に、私に電話してきたのではないか。

 

今、私が勤めている会社は、今年で14年目になる。

少なくとも、今所属している部署についていえば、ブラックではないだろう。

 

嫌な上司とのコミュニケーションや、多くの海外出張に伴う不規則な生活に苦労しているが、何とかこれまで辞めることなく、同じ会社に勤め続けることが出来ている。

サービス残業もないし、土日も休めている。給料も悪くない。

 

T君のような人からすれば、私の置かれている環境はとても恵まれており、羨ましいと感じるかもしれないなと思う。

それでも、仕事は仕事、やはり大変さは当事者にならないと分からない。

 

私も「仕事が辛いな、辞めたいな」と思うことがよくある。

それでも何とか続けられているのは、この会社はまだ全然マシだと分かっており、この程度で音を上げているようでは、もし会社を辞めて別のところに行ったとしても、到底やっていけるものではないからである。

 

私が辞めるときは、そう。

資金を貯めて確実にリタイアできる準備が整ったときである。